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めおとぜんざい
夫婦善哉
織田 作之助
「海風」1940(昭和15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,643 字 · 61 页
適当な売り店がないかと探すと、近くの飛田大門前通りに小さな関東煮の店が売りに出ていた。現在年寄夫婦が商売しているのだが、土地柄、客種が柄悪く荒っぽいので、大人しい女子衆は続かず、といって気性の強い女はこちらがなめられるといった按配で、ほとほと人手に困って売りに出したのだというから、掛け合うと、案外安く造作から道具一切附き三百五十円で譲ってくれた。階下は全部漆喰で商売に使うから、寝泊りするところは二階の四畳半一間あるきり、おまけに頭がつかえるほど天井が低く陰気臭かったが、廓の往き帰りで人通りも多く、それに角店で、店の段取から出入口の取り方など大変良かったので、値を聞くなり飛びついて手を打ったのだ。新規開店に先立ち、法善寺境内の正弁丹吾亭や道頓堀のたこ梅をはじめ、行き当りばったりに関東煮屋の暖簾をくぐって、味加減や銚子の中身の工合、商売のやり口などを調べた。関東煮屋をやると聴いて種吉は、「海老でも烏賊でも天婦羅ならわいに任しとくなはれ」と手伝いの意を申し出でたが、柳吉は、「小鉢物はやりまっけど、天婦羅は出しまへん」と体裁よく断った。種吉は残念だった。