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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
10 暴君の死
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,841 字 · 22 页
一
「さて、前置は宜い加減にして、早速本題に入りますが、最初に皆様に知って置いて頂きたいことは、徳川時代の百姓町人は、その無知と無力のために、領主と称した大名の暴政を、随分トコトンまで辛抱しておりましたが、腹の中では決して悦服していたわけではなく、機会さえあれば、百姓一揆その他の形で、随時随所にその不平を爆発させ、辛うじて三百年間噴火山上の泰平を維持したに過ぎないということであります。
私は好んで百姓一揆の事実を調べましたが、既に小野武夫氏、田村栄太郎氏、森嘉兵衛氏等には尊敬すべき専門の著書があり、私もまた、私だけの蒐集として、百姓一揆に関する写本と手記を少しばかり持っています。
この物語は、その手記に書かれたものの一つで、時代は天保の始め、所は東北のある大藩、所領何十万石、阿武隈大膳正の乱行記の一節、世にも馬鹿馬鹿しく、そして凄惨極まる話であります」
新庄佐太郎の話は続きます。
一
阿武隈大膳正はその時三十二歳、健康で賢くて、一寸良い男で、自惚が強くて、我儘で、恥を知らないとなると、全く暴君型の条件を悉く備えて居りました。桀紂でも、ネロでも、昔から暴君に馬鹿はなく、その非を遂げ、諌を退けるところに、暴君の暴君たる特質があるのです。