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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
10 暴君の死
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,841 字 · 22 页
大膳正は二十七歳にして父に別れ、大藩の若い大守として、最初はなかなかに名君振りを発揮しました。木綿の羽織を着て、草鞋を穿いて領内を巡視したり、お城の中に水田を作らせたり、貧しい百姓町人を引見して訴を聴いたり、それは不徹底で間に合せの名君振りだったにしても、何うやら領内の噂もよく、隠密を通して響く、大公儀の受けも至極でした。
併し、三十二歳で生活力の強い大膳正が、何時までもこの名君の附け焼き刃に我慢して居られる筈もありません。
もう一つ悪いのは、徳川幕府の採った参観交代制と、大名の本妻を江戸に留めて置く一種の人質制でした。川柳に所謂「大名は一年置きに角をもぎ」で、本妻と別れて、草深い田舎のお城で暮らす若い大名に、謹厳清潔に身を持たせようとしたところで、それは無理な注文で、本国の方には大抵、草書で書いた妖艶なお妾などを置いたもので、それはやがて黒田騒動のようなお部屋様が羽を伸ばすことになって、途方もない騒ぎを起した原因にもなったのであります。
阿武隈大膳正もその数には漏れず、お金の方という凄いお部屋様を蓄えました。二十三という良い年増で、曾ては「ありんす国」