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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

14 第四次元の恋

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,531 字 · 23 页

青空文庫

のような出来星の新聞では、この適当に要領の良い「渡り者」を、弁舌と風采で高く買う気になったのも無理のないことだったのです。

横里鯨之進は、早くいえば特種取りの名人だったのです。いや、特種作りの名人といった方が適当だったかも知れません。兎にも角にも、一つの事件を嗅ぎ出すと、柄の無いところに柄をつけ、半分以上は誰かに対する嫌がらせの記事を、三段でも五段でも捏ち上げる特別な腕を持っていたのです。

その横里鯨之進が、矢留瀬苗子に眼を着けない筈もありません。早速都下女学校の評判記を書きたいから、助手として矢留瀬苗子さんを貸して貰いたいと、編集局長に申出たようでしたが、その失礼な申出はさすがに断られてしまいました。記者の資格の上下は無いから、一人の記者が一人の記者を勝手に使うことは、甚だ好ましくないという理由だったようです。

併し、そんな事があったにも拘らず、横里鯨之進の矢留瀬苗子への接近は、同新聞社の耳目を驚かしたことは一と通りではありません。横里鯨之進は大阪から帰ると、社会部に席を与えられましたが、それが故意か偶然か女記者、矢留瀬苗子の隣りで、その日の夕刊の仕事が済むともう、チョコレートか何か出して、矢留瀬苗子の御機嫌を取っているのでした。