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きぞくはしはらう

奇賊は支払う

海野 十三

烏啼天駆シリーズ・1

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,269 字 · 15 页

青空文庫

警視と苅谷一家との会見は、頗る風変りなものだった。警視は、苅谷夫妻に両手をあげるようにお願いし、室内にいる警官たちにも同様の姿勢をとるように強要した。そうして置いて警視の一行は、苅谷夫人繭子の頭から毛布を被せ、玄関先に待たせておいた自動車で搬び去ったのである。玄関先にも警官隊がいたが、そういう場合、階級の上の警視に指揮権があったので、彼に手伝って苅谷夫人を自動車に搬び入れる手伝いをし、そして敬礼をしてお送りしたのだった。平常割切れる答を出すように習慣づけられた幾人かの彼らは、警視が苅谷夫人を他へ移して、烏啼天狗の誘拐行為に対抗するのだと考えた。

ここまでいえば、警視は怪賊烏啼天狗の変装せるもの、後に随った二人の警部補は彼の二人の部下であったと、今更ことわるまでもないであろう。実に賊烏啼は極めて楽々と苅谷夫人を誘拐し去ったのである。

それはまことに見事なプレーであったが、それでは名探偵袋猫々先生の面目はいずくにか在る?

だが、このとき袋猫々探偵は得意の絶頂にいた。なぜならば、彼は巧みに苅谷夫人の代役をつとめていたからである。別言すれば、烏啼が苅谷邸から攫っていったのは、姿こそ繭子夫人であったが、その中身に至っては当の夫人ではなく、実は猫々先生であったのである。