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きぞくひがん
奇賊悲願
海野 十三
烏啼天駆シリーズ・3
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,375 字 · 19 页
やっぱり空には戸鎌のような月が出ていて、貫一がやった昨夜の仕事を知っているぞという風に見えた。
お寺は海端にあった。松の木の根元で煙草を吸いつけていると、引揚げられた舟の蔭から一人の男が立現われて、貫一に火を貸してくれといった。その男を見て貫一は愕いた。派手な毛糸を縞に編んだセーターを着、チョコレート色のズボンをはいた男だった。顔は大きく、頭の上に乗っている鳥打帽はいやに小さく、昨夜の刑事にたいへん似ているが、真逆あの刑事ではあるまい。あの刑事なら右腕をつけ根のところから千切られて、今頃は蒼い顔をして三途の川を歩いている筈だった。――が、それにしても、声音が似ているので、貫一はぞっとした。
刑事は、自らそれを名乗ると共に、近所が物騒なことを告げて、向こうへ行ってしまった。昨夜と同じようだ。近頃の刑事というのは皆あんな服装をし、あんなことをいうように命令されているのだろうか。
それから二十分後に、貫一は琥珀寺の秘仏である吉祥天女像を、荒ごもに巻いて背中に背負い、寺を出た、その寺では、坊主たちが気がついて騒ぎだしたが、貫一がピストルをポケットから出すと一同は温和しくなり、貫一のいうことを聞いて一同は便所の中に本当の雪隠詰めとなった。