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おくさんのいえで
奥さんの家出
国枝 史郎
「新青年」1927(昭和2)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,851 字 · 28 页
答えは恐ろしく簡単であった。
「間違いは無い。あの種の女さ」
「何故こんなことをするのだろう?」その答えも簡単であった。「他に何がある、生活うためさ」
「だってこんな白昼に?」「白昼だからこそ商売になる」
顔にも姿にも手の指にも、あざやかな輪廓を持っていた。そうして特別に横顔が可かった。(これこそ何より大切なことさ!)
陰影のキッパリした女であった。(だから大概身分は解る!)
依然私はこだわらなかった。彼女の自由になっていた。
とはいえ何うしても東の方へだけは、私は顔を向けなかった。彼等の仲間がいるからであり、それが怖かったからである。
遊動円木、機械体操、廻転箱、また鞦韆、……そういうものの揃っている、小運動場の一画へ来た。
咲きはじめた藤の棚があった。
新樹が夫れらを引っ包み、大切そうに保護していた。
何方を見ても人気が無い。
十日前だったら大変だったろう。桜の花を見る人で、ごった返していただろう。潮の引いた後は寂しいものだ。
小運動場から二十歩あるき、またベンチへ引っ返えした。展望台を兼有した、水禽の檻まで来たのである。
「一番ここが可さそうだ」この考えは誤りはあるまい。