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おんなのけっとう

女の決闘

太宰 治

「月刊文章」1940(昭和15)年1~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,661 字 · 75 页

青空文庫

「どうしたの。」

「見つかった、感づかれた。」あの人は無理に笑ってみせようと努めたようだが、ひくひく右の頬がひきつって、あの人の特徴ある犬歯がにゅっと出ただけのことである。

私はあさましく思い、「あなたよりは、あなたの奥さんの方が、きっぱりして居るようです。私に決闘を申込んで来ました。」あの人は、「そうか、やっぱりそうか。」と落ちつきなく部屋をうろつき、「あいつはそんな無茶なことをやらかして、おれの声名に傷つけ、心からの復讐をしようとしている。変だと思っていたのだ。ゆうべ、おれに、いつにないやさしい口調で、あなたも今月はずいぶん、お仕事をなさいましたし、気休めにどこか田舎へ遊びにいらっしゃい。お金も今月はどっさり余分にございます。あなたのお疲れのお顔を見ると、私までなんだか苦しくなります。この頃、私にも少しずつ、芸術家の辛苦というものが、わかりかけてまいりました。と、そんなことをぬかすので、おれも、ははあ、これは何かあるな、と感づき、何食わぬ顔して、それに同意し、今朝、旅行に出たふりしてまた引返し、家の中庭の隅にしゃがんで看視していたのだ。夕方あいつは家を出て、何時何処で、誰から聞いて知っていたのか、お前のこの下宿へ真直にやって来て、おかみと何やら話していたが、やがて出て来て、こんどは下町へ出かけ、ある店