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おんなのけっとう
女の決闘
「月刊文章」1940(昭和15)年1~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,661 字 · 75 页
背後の男の、貪婪な観察の眼をお忘れなさらぬようにして、ゆっくり読んでみて下さい。
女学生が最初に打った。自分の技倆に信用を置いて相談に乗ったのだと云う風で、落ち着いてゆっくり発射した。弾丸は女房の立っている側の白樺の幹をかすって力が無くなって地に落ちて、どこか草の間に隠れた。
その次に女房が打ったが、矢張り中らなかった。
それから二人で交る代る、熱心に打ち合った。銃の音は木精のように続いて鳴り渡った。そのうち女学生の方が先に逆せて来た。そして弾丸が始終高い所ばかりを飛ぶようになった。
女房も矢張り気がぼうっとして来て、なんでももう百発も打ったような気がしている。その目には遠方に女学生の白いカラが見える。それをきのう的を狙ったように狙って打っている。その白いカラの外には、なんにも目に見えない。消えてしまったようである。自分の踏んでいる足下の土地さえ、あるか無いか覚えない。
突然、今自分は打ったか打たぬか知らぬのに、前に目に見えた白いカラが地に落ちた。そして外国語で何か一言云うのが聞えた。
その刹那に周囲のものが皆一塊になって見えて来た。灰色の、じっとして動かぬ大空の下の暗い草原、それから白い水潦、それから側のひょろひょろした白樺の木などである。