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おんなのさかなうり
女の魚売り
小川 未明
「赤い鳥」1922(大正11)年4月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,886 字 · 8 页
だんだん海に近づくと、風が、強く吹いていました。そして、松の木が、風に吹かれて鳴っている。そのあいまに、ド、ド、ド――という海鳴りの音がしていたのでした。
二人は、一つの砂山を上がりますと、もう、目の前には、真っ青な海が、浮き上がっていました。そして波の音が、絶え間なく起こっています。海にも、夕日が赤々とさしていました。白帆は、酒に酔ったように、ほんのりと色づいて、青い波の間に、見えたり消えたりしていました。陸に近いところには、岩が重なり合っていて、その岩に打突かると波のしぶきが、霧となって、夕暮れの空に細かく光って舞い上がっています。
女は、岩の近くにきて、肩からてんびん棒をはずして、かごを湿った砂の上に下ろしました。
「さあ、たいを海に放すのだ。」と、金持ちはいいました。
「よく、見ていてください。」と、若い女はいいました。そして、かごの中のたいを、一ぴきずつ白い手ですくうようにして、取り上げました。
たいは、いま、ふたたび故郷に帰ろうとします。女が、紅いたいを、波の間に落としますと、たいは、おどって、はや、その姿を青黒い海の底に隠したのです。