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おんなのさかなうり

女の魚売り

小川 未明

「赤い鳥」1922(大正11)年4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,886 字 · 8 页

青空文庫

」と、女はいった。

すると、金持ちは、戸口に出て、女の持ってきたたらを見ました。

「いま時分、たらがどうして捕れたろう。」と、金持ちは不思議がりました。

「今朝、たくさん上がったのです。」と、女は答えた。

「この生暖かな陽気じゃ、たらは腐ってしまうだろう。うんとまけてゆけば買ってもいい。」

「いくらにでもまけてゆきます。」と、女はいいました。

金持ちは、うんとまけさして、みんなこのたらを買いました。そして、その晩は家じゅうのものが腹いっぱい食べたのであります。

すがめの女が、浜の方へ帰った時分から、南の風が吹きはじめました。あまり暖かなもので、遅咲きの花までが、一時に咲き、地の下からは、いろいろの草が、一夜の中に芽を出したのであります。だれでも、頭痛がするといわないものがないほどでありました。

たらを腹いっぱい食べた金持ちの一家は、どうしたことか、その夜から髪の毛がばらばらと抜けて、それから幾日もたたないうちに、みんなぴかぴか光るはげ頭になってしまいました。

「たらにあたったのだ。」と、みんなはいいました。

金持ちは、たらにあたったことから、いつかたいを海に放して、金を払わないで逃げてきたことを思い出しました。