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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
しかもそれが岩石のような肉のカタマリをつみあげている。両脚をガッシと左右にひらいて娘をよび、
「それ、突いてこい」
娘は拳をかためて充分に身構え、火を吐くごとくに打ちかかったが、オヤジの腹はそれをマトモに発止とうけていささかもタジロギを見せない。むしろ鋼鉄に襲いかかったように娘の手足にタジロギが見られた。娘は心をとり直して再び三たび身体ごと打ちこむように突きかかるが、フシギなもので、火を吐く拳の力はもう認めることができない。なぜなら満身朱にそまり、莫大な火焔を発しているのはオヤジの裸体だったからである。火焔の幕をはりめぐらしているように感じられた。オヤジは稽古を終えて静かに存八を見やり、
「人間の身体は微妙なもので、やる気があればこれぐらいは誰でもできるが、やりぬく者がないだけのことだな。キサマでも、やる気を起して努めればできるのだ。キサマは案外見どころがあるぞ」
「いえ、誰もそうは申しません」
「オレの目はマチガイがない。人間は案外なものだ。今からでもおそくはないぞ。身をいれて修業するがよい」
「そいつは願い下げにしますが、ま、下僕の方はつとまるところまでつとめることに致しましょう。