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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
一応の虚実には富んでいるが、人智のこざかしさを脱けだすことができないのだ。流祖法神大先生が長崎に下ってオランダ医学を究められたのはこの理に当るもので、正剣は人智を越えて人体に属するものだ。人智は魔をよぶことができないが、人体には魔を宿すことができる。獅子も虎も剣を握ることはできないが、諸氏らは剣を握ることができる。人智が握るのではなくて、人体が握るのだ。人体の秘奥によって握ることができるのだ。この理が会得できればおのずから人智の剣を越えることができるのだが、それを正しく会得するには山野にこもって長年月の苦行を必要としよう。寺田が魔剣を会得するには尚数十年の年月を要しよう。まだ当流をつぐべき人物ではない。また、存八も見どころはあるが、まだ当流をつぐには程遠いものがある。存八も人智のこざかしさに於て寺田に劣らぬところがあり、ずるさにたけているばかりでなく、その人体におのずから魔を宿しているところがある。人の隙を見ぬく素早さ、見ぬくと同時に動く素早さ、これはコソ泥の天分だな。スリの天分、泥棒の天分だ。キサマにはこれが身についている。キサマは刑務所で仲間からコソとよばれて蔑まれていたときくが、コソ泥に向く動きの妙はめったに見られぬ天分なのだ。