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おんなけんし
女剣士
「小説新潮 第八巻第八号」1954(昭和29)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,694 字 · 74 页
のびている筈の存八はもういない。
ツルベの音がするので井戸端へ行ってみると、存八はツルベに口をつけて水をのんでいる最中である。
「コレ、存八」
「ハ? もう、カンベンして下さい」
「今、すぐに出て行け」
歌子は刀のサヤをはらって存八に突きつけた。存八はツルベを落してガタガタふるえた。声もでない。
「すぐ出て行け。また、コソ泥になるがよい。戻ってくると、一刀両断だぞ。この村にウロウロしていても斬りすてるから、そう思うがよい。立て。早く、でてゆけ」
刀で軽く突く。軽くと云っても、血がたれてきた。
存八は歯の根が合わない。それでもようやく泣き声をふりしぼって、荷造りの時間を与えてもらい、ナンキン袋の世帯道具一式を背負って立ち去ったのである。
朝之助が戻ってきたのは、それから三日目のことだった。
歌子はおどろいた。昔の父の面影はどこにもない。痩せ衰え、蒼ざめて、むくんでいる。眼がドロンと濁って、口にシマリがなく、全身に力がぬけているのである。そして、全然喋らないのだ。何を問いかけても返事をしない。そして一日中ねているだけだ。
歌子が食事を運んで行くと、モリモリとくう。