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にょきゃくいっしゅうかん
女客一週間
豊島 与志雄
「新潮」1931(昭和6)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,724 字 · 26 页
その色彩の捉え難さを、殊に表現し難さを、彼は自作の像を眺めながら発見するのである。扉の向うの、次の室では、キミ子が、麦桿で壺の底を吹いている。或は何かを読んでいる。それに対して彼は、殆んど女体は感じないが、一種の女性を感ずるのだ。そして彼の眼は、また塑像の方へ向けられる。何かしら或る苛立ちが、彼の胸に欝積してくる……。
そうした苛立ちもあって、彼は或る晩、友人に誘わるるまま、ひどく酒を飲んで、前後不覚に酔っ払ってしまった。初め天麩羅を食いに出かけたのがもとだ。翌朝、自宅の寝床で眼を覚すと、宿酔の気持の上に、腹がしくしく痛んでいる。腸の中に、恐らく天麩羅の蝦が停滞して、足ぶみをしてるのだ。そのたびに、腸の粘膜が痛み出す。そして脳味噌の中には、酒の滓が沈澱していて、重苦しい。彼は眼を開いたままじっと寝ていた。身動きするのも大儀だ。手足が、そして身体中の筋肉が、別々の物体になって、ただそこに寄り集ってるきりだ。午後になるまで、彼は起上らなかった。
そこへ、キミ子がやってきて、彼の床わきにぴたりと坐ったものだ。何だか彫刻でも据えたような恰好だ。そして生真面目に、御病気なら看護してあげると云う。