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にょきゃくいっしゅうかん
女客一週間
豊島 与志雄
「新潮」1931(昭和6)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,724 字 · 26 页
「御免、御免よ。そんなつもりじゃなかったんだけれど……。」
「うん、いいの。」
腑に落ちた様子で――何が腑に落ちたのか?――晴れやかな笑みをもらして、後ろ向きに、また彼の膝にとび乗って、伸びをしたものだ。ハドスンも相互扶助も、どこかへいって、淋しそうな彼女だ。そして、着物ごしにも、温い彼女だ。何にも云うことがなかった。
「さあ、もう遅いよ。寝よう。」
「まだいいの。」
「だって、いつまでこんなことしてたって、仕様がないじゃないか。」
「そうね。」
彼女は彼の膝からとび下りて、片手を差出した。何の疑念もまた欲望もない、大きな目付だ。彼は力強くその手を握って打振った。
「おやすみ。」
晴々とした気持だ。
その気持が、翌日までも続いていた。彼が起上ると、彼女はもう早く起きて、朝の掃除にかかっている。彼を見て、一寸眩しそうに笑うのだ。お掃除がすんだらすぐに出かけるんだと云う。それを連れて、彼はアトリエの次の室にはいっていった。目には立たないが、隅々まで妙に綺麗になったようだ。そのお礼に、何かしなくてはなるまい。それを彼は考えあぐんでるんだ。少なくとも彼女は、全く小間使同様に働いてくれた。