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にょきゃくいっしゅうかん

女客一週間

豊島 与志雄

「新潮」1931(昭和6)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,724 字 · 26 页

青空文庫

朝日の明るみで見るせいばかりでなく、彼女は晴れやかな顔をしている。濃い眉毛が健康そうだ。眼の奥には、もう思想の影はない。まるい頬の脹らみに、口が小さい。鼻の下の上唇のみぞが深く切れて、それが大きな目玉と共に、子供っぽく無邪気にも見えれば、また、何だか不幸な運命を表徴するようにも見えるのだ。

「先生んとこに、一週間ばかり置いて下さらない? ちゃんとした家庭で、少し働いてみたいから。」

「主婦のない家庭でも、そう見えるかしら。」

「そんなら、半端な家庭でもいいわ。ほんとに、働いてみたいの。」

「まあ、気まぐれは、よすんですね。ただいるんなら、四五日ぐらい構わないけれど……方々かきまわされちゃあ、こっちから御免だ。」

「大丈夫よ、あたし、女中さんたちの指図通りにするから……。」

「さあ、どうだろうね。」

女中の方に島村が言葉を向けると、女中は静に笑っている。その眼がキミ子の眼と出逢って、更に微笑するのだ。いつのまにか、妥協してるのかもしれない。だが、そんなことより、島村は自分の仕事を持っていた。アトリエに籠って、彫塑の泥土をこねまわさねばならない。アトリエは彼の城廓だ。