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おんなごころのつよければ
女心の強ければ
豊島 与志雄
「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页
変化はあっても似たり寄ったりで、人の精神へではなく情緒へだけ絡みついてくる。何を訴えようとしているのであろうか。
長谷川は、また、謎を投げつけられたような気持ちになるのだった。琴の前に坐ってる千代乃の姿は、想像しただけでも、あの洗い髪の彼女と、あの理知的な彼女と、両方に引っ張りだこになって、しっくりした落着きがなかった。
このことで、長谷川は更に苛ら立ちを覚えて、琴の音から気を外らそうとした。室の中を飛び廻ってる蝿に、注意を集めてみた。その羽音がどこかに消えると、琴の音も遠くかすかになり、やがて、足音もなく千代乃が立ち現れて、にっこりと眼付きで笑みかけ、指先を痛いほどきゅっと握りしめる……自惚れきった妄想だ。
彼はいつも、ひとり放り出されていたに過ぎない。
だが、この間に長谷川は、爺やの辰さんから、いろいろなことを聞き出した。辰さんはこちらに用がふえて来てることが多く、合間には畑の野菜物、遅蒔きの茄子や大根の手入れをしていた。その仕事を長谷川が通りがかりに佇んで眺めていると、辰さんの方からしばしば話しかけてきた。つまらない世間話ばかりだったが、その中には千代乃のことも出て来た。