轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

柿沼の方には、もっと深い怖いものがあります。

兄との話はそれきりに終りました。兄からも、私からも、日常の些細な用事以外は、なにも言い出しませんでした。そして何事もなく時がたつのが、私にはかえって気懸りになりました。柿沼からもなんの便りもありませんでした。そして柿沼のあの陰鬱な不吉な影が、また私の眼先にちらつきだしました。

昨日の晩、いえ、昨日の晩といえば昨夜ですから、一昨日の晩のことです。まだ明るいうちに、本館から辰さんがやって来て、旦那が見えませんでしたかと聞きました。いいえと答えると、はて、おかしいな、と首をかしげています。柿沼によく似た人を見かけたのだそうです。

そのあと、暗くなってからのことです。私は茶の間で書物を読んでおりました。あちらの室で、少しばかりの寝酒をちびりちびりやっていた辰さんが、ふいに、はいと大きな声をして、玄関へ立ってゆき、戸をあけて、しきりに外をすかして見ています。私が声をかけると、辰さんは戸をしめて、そして言いました。

「いま、足音がして、だれか、戸を叩きませんでしたか。どうも、旦那のようだったがなあ……。」

夕方のことから引続いた錯覚なのでしょう。