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おんなごころのつよければ

女心の強ければ

豊島 与志雄

「女性改造」1950(昭和25)年8月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 页

青空文庫

「そんなら、前に知らしてくれたっていいのに。」

「昨日は一日、用事があったものですから。忙しかったわ。」

「いきなり電話でしょう。大至急用があるなんて……。あわてちゃった。なにかあったんですか。」

「逢いたかったの。」

はぐらかすように言って、彼女は眼をちらと動かした。

それで、言葉が途切れ、コーヒーが来て、長谷川はそれをすすった。

しばらく見ない間に、千代乃はすこし痩せたようだった。なんだか疲れてるようで、顔色も冴えていなかった。その代り、なにか思いつめてるといった風な、一筋の心棒が通ってる感じだった。

「なにかあったんでしょう。」と長谷川は尋ねた。

「いいえ。」

彼女はかるく頭を振り、それから上目を据えてちょっと考えた。

「あなた、今日、お忙しいの。」

「いつもの通りです。」

「それでは、これから、どこかへ連れていって下さいません。電話では、ちょっと言いにくかったものですから……。どこでもよろしいわ。お金は、わたし用意していますの。ただ、東京都内はいや。東京の外でさえあれば、どこでもいいわ。どんなところでもいいわ。いろいろ、お話がありますの。ね、行きましょうよ。