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じょなん
女難
国木田 独歩
「文藝界」1903(明治36)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页
ただ汚ないばかりでなく、見るからして彼ははなはだやつれていた、思うに昼は街の塵に吹き立てられ、夜は木賃宿の隅に垢じみた夜具を被るのであろう。容貌は長い方で、鼻も高く眉毛も濃く、額は櫛を加えたこともない蓬々とした髪で半ばおおわれているが、見たところほどよく発達し、よく下品な人に見るような骨張ったむげに凸起した額ではない。
音の力は恐ろしいもので、どんな下等な男女が弾吹しても、聴く方から思うと、なんとなく弾吹者その人までをゆかしく感ずるものである。ことにこの盲人はそのむさくるしい姿に反映してどことなく人品の高いところがあるので、なおさら自分の心を動かした、恐らく聴いている他の人々も同感であったろうと思う。その吹き出づる哀楽の曲は彼が運命拙なき身の上の旧歓今悲を語るがごとくに人々は感じたであろう。聴き捨てにする人は少なく、一銭二銭を彼の手に握らして立ち去るが多かった。
二
同じ年の夏である。自分は家族を連れて鎌倉に暑さを避け、山に近き一小屋を借りて住んでいた。ある夜のこと、月影ことに冴えていたので独り散歩して浜に出た。
浜は昼間の賑わいに引きかえて、月の景色の妙なるにもかかわらず人出少し。