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じょなん

女難

国木田 独歩

「文藝界」1903(明治36)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页

青空文庫

長屋の者は大通りに住む方とは違いまして、御承知でもございましょうが、互いに親しむのが早いもので、私が十二軒の奥に移りますと間もなく、十二軒の人は皆な私に挨拶するようになりました。

その中でも前に住む大工は年ごろが私と同じですし、朝出かける時と、晩帰える時とが大概同じでございますから始終顔を合わせますのでいつか懇意になり、しまいには大工の方からたびたび遊びに来るようになりました。

大工は名を藤吉と申しましたが、やはり江戸の職人という気風がどこまでもついて廻わり、様子がいなせで弁舌が爽やかで至極面白い男でございました。ただ容貌はあまり立派ではございません、鼻の丸い額の狭いなどはことに目につきました。笑う時はどこかに人のよい、悪く言えば少し抜けているようなところが見えて、それがまたこの人の愛嬌でございます。

私のところへ夜遊びに来ると、きっと酒の香をぷんぷんさせて、いきなり尻をまくってあぐらをかきます。そして私が酒を呑まぬのを冷やかしたものでございます。

そしてまた、しきりと女房を持てとすすめました。そのついでにどうかいたしますと、『君なぞは女で苦労したこともない唐偏木だから女のありがた味を知らないのだ』