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じょなん

女難

国木田 独歩

「文藝界」1903(明治36)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页

青空文庫

とやるのです。御本人はどうかと申しますと、あまり苦労をしたらしくもないので、その女房も、親方が世話をして持たしてくれたとかいうのでございます。

けれども私は東京に出てから十年の間、いろいろな苦労をしたに似ず、やはり持って生まれた性質と見えまして、烈しいこともできず、烈しい言葉すらあまり使わず、見たところ女などには近よることもできない野暮天に見えますので、大工の藤吉が唐偏木で女の味も知らぬというのは決して無理ではなかったのです。実際私は意気で女難にかかったというよりか皆んな、おとなしくって野暮だからかえって女難にかかったのでございます。

ある夜のことに藤吉が参りまして、洗濯物があるなら嚊に洗わせるから出せと申しますから、遠慮なく単衣と襦袢を出しました。そう致しますとそのあくる日の夕方に大工の女房が自分で洗濯物を持って参りまして、これだからお神さんを早くお持ちなさい、女房のありがた味はこれでもわかろうと私の膝の上に持って来たのを投げ出して帰えりました。この女はお俊と申しまして、年は二十四五でございます。長屋中でお俊はいつか噂にのぼり、またお俊の前でもお神さんはどう見ても意気だなぞと、賞めそやす山の神があるくらいですから私の目にもこれはただの女ではないくらいのことは感づいていたのでございます。