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じょなん
女難
国木田 独歩
「文藝界」1903(明治36)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页
私は眠られないのと熱つ苦しいとで、床を出ましてしばらく長火鉢の傍でマッチで煙草を喫っていましたが、外へ出て見る気になり寝衣のままフイと路地に飛び出しました。路地にはもう誰もいないのです。路地から通りに出ますと、月が傾いてちょうど愛宕山の上にあるのでございます。外はさすがに少しは風があるのでそこからぶらぶら歩いていますと、向うから一人の男が、何かぶつぶつ口小言を云いながらやって参ります、その様子が酔っぱらいらしいので私は道を避けていますとよろよろと私の前に来て顔を上げたのを見れば藤吉でございました。
藤吉は私を見るやいきなり、
『イヤ大将、うめえところで遇った、今これからお前さんとこへ、押しかけるとこなんだ。サア家へ帰れ、今夜こそおれは勘弁ならんのだ、どうしてもお前さんに聞いてもらうことがあるんだ』と私の手を取ってグイグイ路地の方へ引っ張って参るのでございます。
私も酔っぱらいと思いまして『よしよし、サア帰ろう、なんでも聞こう』と一しょに連れ立って家に入りました。
藤吉の顔を見ると凄いほど蒼ざめて眼が坐っているのでございます。坐るが早いか、
『サア聞いてくれ、私はもうどうしても勘弁がならんのだ』