轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
じょなん
女難
国木田 独歩
「文藝界」1903(明治36)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,695 字 · 45 页
それを母が励まして絶頂の茶屋に休んで峠餅とか言いまして茶屋の婆が一人ぎめの名物を喰わしてもらうのを楽しみに、また一呼吸の勇気を出しました。峠を越して半ほどまで来ると、すぐ下に叔母の村里が見えます、春さきは狭い谷々に霞がたなびいて画のようでございました、村里が見えるともう到いた気でそこの路傍の石で一休みしまして、母は煙草を吸い、私は山の崖から落ちる清水を飲みました。
叔母の家は古い郷士で、そのころは大分家産が傾いていたそうですが、それでも私の目には大変金持のように見えたのでございます。太い大黒柱や、薄暗い米倉や、葛の這い上った練塀や、深い井戸が私には皆なありがたかったので、下男下女が私のことを城下の旦坊様と言ってくれるのがうれしかったのでございます。
けれども何より嬉しくって今思いだしても堪りませんのは同じ年ごろの従兄弟と二人で遊ぶことでした。二人はよく山の峡間の渓川に山を釣りに行ったものでございます。山岸の一方が淵になって蒼々と湛え、こちらは浅く瀬になっていますから、私どもはその瀬に立って糸を淵に投げ込んで釣るのでございます。見上げると両側の山は切り削いだように突っ立って、それに雑木や赭松が暗く茂っていますから、下から瞻ると空は帯のようなのです。