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こうい
好意
豊島 与志雄
「改造」1924(大正13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,059 字 · 40 页
「一寸話があるから、あちらへ行っててくれないか。」
私は吃驚したが、看護婦は落付払っていた。
「でも、余りに込み入ったお話をなさいますと……。」
「大丈夫だ。一寸の間だから。」
看護婦が意味の分らない目配せを私の方にして、不機嫌そうに出て行った時、私はもう蛇の前に出た蛙のように竦んでしまったのである。そういう私に向って、吉岡は一二分の沈黙の後、いきなり爆発しかけてきた。
「君は敏子に頼まれて僕の所へやって来たんだろう。」
私はぎくりとしたが、眼を外らし努めて平気に答えた。
「いや別に……。先刻も云った通り、その珍らしい画帳が見付かったので……。」
「初めはそのつもりだったろうが……。いやもういいや。君の好意は僕にもよく分ってる。僕は人の好意を無条件に受け容れることが好きなんだ。皆僕のことを思ってしてくれてるんだから、僕はただ感謝している。然し君達はどうしてそう寄ってたかって、陰でこそこそ相談し合ってるんだい。僕がもう明日でも死ぬかと思ってるのだろう。」
私は黙って彼の顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)の震えを見ていたが、どうせ遁れられないことと思って、じかに問題に触れていった。