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ようば

妖婆

芥川 竜之介

大正时代的东京街头,电车电话环绕,却发生了宛如爱伦·坡小说中的诡异事件。你敢相信,那位妖婆可能就藏在文明的光影里吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,473 字 · 73 页

青空文庫

ところが例の裸蝋燭の光を受けて、小さいながら爛々と輝いた鏡の面を見つめていると、いくら気を確かに持とうと思っていても、自然と心が恍惚として、いつとなく我を忘れそうな危険に脅され始めました。そうかと云って、あの婆は、呪文を唱える暇もぬかりなく、じっとこちらの顔色を窺いすましているのですから、隙を狙って鏡から眼を離すと云う訣にも行きません。その内に鏡はお敏の視線を吸いよせるように、益々怪しげな光を放って、一寸ずつ、一分ずつ、宿命よりも気味悪く、だんだんこちらへ近づいて来ました。おまけにあの青んぶくれの婆が、絶え間なく呟く呪文の声も、まるで目に見えない蜘蛛の巣のように、四方からお敏の心を搦んで、いつか夢とも現ともわからない境へ引きずりこもうとするのです。それがどのくらいかかったか、お敏自身も後になって考えたのでは、朧げな記憶さえ残っていません。が、ともかくも自分には一晩中とも思われるほど、長い長い間続いた後で、とうとうお敏は苦心の甲斐もなく、あの婆の秘法の穽に陥れられてしまったのでしょう。うす暗い裸蝋燭の火がまたたく中に、大小さまざまの黒い蝶が、数限りもなく円を描いて、さっと天井へ舞上ったと思うと、そのまま目の前の鏡が見えなくなって、いつもの通り死人も同様な眠に沈んでしまいました。