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ようふ
妖婦
織田 作之助
「風雪 三月号」1947(昭和22)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,892 字 · 14 页
安子は三日ばかり田舎でブラブラしていたが、正月には新銀町へ戻った。せめてお正月ぐらい東京でさしてやりたいという母親の情だったが、しかし父親は戻って来た安子に近所歩き一つさせず、再び監禁同様にした。安子は一日中炬燵にあたって、
「出ろと云ったって、誰がこんな寒い日に外へ出てやるものか」
そう云いながらゴロゴロしていたが、やがて節分の夜がくると、明神様の豆まきが見たく、たまりかねてこっそり抜け出した。ところが明神様の帰り、しるこ屋へ寄って、戻って来ると、家の戸が閉っていた。戸を敲いてみたが、咳ばらいが聴えるだけで返事がない。
「あたいよ、あけて頂戴。ねえ、あけてよ。だまって明神様へお詣りしたのは謝るから、入れて頂戴」と声を掛けたが、あけに立つ気配もなかった。
「いいわよ」
安子はいきなり戸を蹴ると、その足でお仙の家を訪れた。
「どうしたの安ちゃん、こんなに晩く……」
「明日田舎へゆくからお別れに来たのよ」
そして安子はとりとめない友達の噂話をはじめながら、今夜はこの家で泊めて貰おうと思ったが、ふと気がつけばお仙はともかく、お仙の母親は、界隈の札つき娘で通っている女を泊めることが迷惑らしかった。