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おばけのこえ
妖怪談義
柳田 国男
柳田国男『妖怪談義』。同一底本的分册已合并为一书。收入:おばけの声、かはたれ時、幻覚の実験。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,618 字 · 16 页
この二つの実例の前の方は、あらかじめ人心の動揺があって、不思議の信ぜられる素地を作っていたともみられるが、後者に至っては中心人物の私なき実験談、それも至って端的に又簡単なものが、ついに一般の確認を受けたのである。その根柢をなしたる社会的条件は、甚だしく、幽玄なものであったと言わなければならない。
奥羽の山間部落には路傍の山神石塔が多く、それがいずれもかつてその地点において不思議を見た者の記念で、たいていは眼の光った、せいの高い、赫色をした裸の男が、山から降りて来るのに行き逢ったという類のできごとだったということは、遠野物語の中にも書き留めておいたが、関東に無数にある馬頭観音の碑なども、もとは因縁のこれと最も近いものがあったらしいのである。駄馬に災いするダイバという悪霊などは、その形が熊ん蜂を少し大きくしたほどのもので、羽色が極めて鮮麗であった。この物が馬の耳に飛び込むと、馬は立ちどころに跳ねあがってすぐ斃れる。あるいは又一寸ほどの美女が、その蜂のようなものの背に跨がって空を飛んで来るのを見たという馬子もある。不慮の驚きに動顛したとは言っても、突嗟にそのような空想を描くようなかれらでない。