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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

そしてそうなってみると急に驚くほどの女らしさを見せ、けんきょな気持でいろんな面での自分の無知を恥じながら、

「私のような、文学のことも政治のことも何にも知らない者でも、それをやっている人を助けることでみんなの仲間入りが出来るというなら、私決心するわ。私は私の身についたもので暮すより知恵のない人間ですもの。」

結婚は秋までのばしたいという閑子のたった一つの希望条件も、男の側のせっかちな申出にまけて、八月の暑熱の中を式は挙げられることになった。どうせゆくなら一日でも早くいって助けてあげる方がいいという貞子の助言もあったからである。その時、野村の心にどんな打算があったとしても、とにかく閑子は望まれて、一応は人にもすすめられて嫁いだのである。その道筋に多少のつまずきがあったとしても、閑子の気持はいたわってやらねばならない。四十となれば世間的な見栄や、かけ引などもあったかも知れぬが、ミネはそれをそっと包んで平凡な女の誇りを持たせようとした。大きな四人の子のある野村の条件が、裁縫のできる女であることは、閑子にとってどんな喜びであったろう。こんな条件を出す男をミネは自分の回りには見出せなかった。