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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

」

レイ子は子供のように甘ったれていって、一しょに歩き出した。が、途中で画かきの仲間の姿を見つけ出すと、「あー、いたいた。」と手をふりながら下駄音も高くその方へ走った。まるで十一の少女のようだった。ミネたちのコースは日劇を毎日新聞社の方に折れ、三菱街を堀端の方へぬけていった。大きなビルディングの間の狭い小路のあっちからもこっちからも、幾組もの小集団が、赤旗を先頭に広場へ広場へと、歌声と共に進んでゆく。あとからあとから押しよせてくる群集、ビルディングの窓は人の顔が重り合っている。近づくにつれ、四方八方のあらゆる通りは大海にそそぐ川のように、足音の流れで埋められた。歌声は空にも地にもみちあふれている。ミネたちのうしろから、エスペラントの団体のみどりの大旗が、幅一ぱいにひろげられて、小さな集団を抱えこむいきおいで押してきた。ミネたちは夢中で、広い空の下に集る無数の人群れの中へととけこんでいった。森を背に第十九回メーデーと斜め横書きの字が赤地に白くぬかれている。それを中心に幾千幾万の旗やプラカードや、数知れぬ群集が立ったり坐ったり犇めいている。定められた文化団体の場所へ近づくためには、人と人との間を、一足交す毎に片足ずつの踏場をつま先で拾い出すようにして、ごめんなさい、ごめんなさい、と足数だけわびながらゆかねば