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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

野村が何故それほど裁縫に大きな期待をもたねばならなかったかというよりも、そこでこそ自分を生かすことの出来る閑子をミネは押出すことに心を奪われてさえいた。作家の野村がただ妻をと求めていたのなら、ミネはそこへ閑子を結びつけようとはおそらく思わなかったにちがいない。式があげられる前に野村は閑子に一度家の中をみて貰いたいといってきたことがある。そしてその日野村の三人の娘たちは閑子を迎えにきた。十七から下へ二つちがいという年で、きゃっきゃっと笑いさざめきながら、始めて訪れたミネの家の玄関を、出たり入ったりして恥かしがる。その子供っぽい態度は、いかにも母を得る喜びにみたされていて、ミネは閑子のために喜び、涙ぐみさえした。少し腺病質らしいが、貞子のいう通り全く顔立ちのやさしくととのったきれいな子供たちだった。野村の田舎者らしい素朴さに似ぬほど、色の白い、都会の子らしい顔つきをしていた。この子供たちの母として、閑子はやはり似合ってはいない。いかにもそれはとってつけた母と子の感じだった。だが当の閑子はいささかもそれに不自然を感じないらしく、みんなに話しかけていた。