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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

二度目の時も、三度目の時も、野村のことを聞くといつも閑子は目を伏せて、多くを語らなかった。ミネはもう、決定的な不安を感じて、じっとしていられず、ある時閑子のあとを追うようにして不意に野村の家を訪ねたりした。その時の野村の慌てた瞬間の表情をミネは忘れることが出来ない。落ちつきを取戻してからも野村は、何かいい出されはしまいかと警戒するような態度で、平凡な世間話をする。その取りつくしまのないような、よそよそしい態度に堪りかねて、閑子のとめるのを聞かずに、ミネは辞した。門を出れば忽ちまた不安は湧き出してくる。何かあるのだ。何かいい分があるにちがいない。それをどうしても知らねばならない。何かをかくしているらしい野村の心を知るには、とにかく野村に会わねば話にならない。ミネはここ一か月間案じつづけ、考えつづけていたのである。

そんな気持から、無理に出なくてもすんだ、ただの親睦会のような今日の集りにもミネは出てきたのであった。野村も悠吉も酒の加減でか、機嫌よく話してはいるが、やっぱり御座なりの文学談くらいで、男同士の悠吉にさえ、何かを警戒しているように、ミネには思えた。