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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
以前結婚生活の経験を持っている彼女は、破婚の苦々しさも知っているわけ。仕事をもつ女の、妻としての複雑な思いから解放されて、永い間独り暮しをしていた彼女が、今また新しい結婚をしようとしているのだ。原子爆弾をうけて、一瞬に消えてゆく人間の命を目のあたりにみてきた彼女の人生観が、ここまできたのだろうかと、ミネはある好意で彼女をみたのであった。
「結婚なんぞもうこりこりの筈なんですがね、やっぱり女はそんなわけにもゆかんのじゃね。でも共産党の人なら普通の男のように分らんことはいいなさるまいって、母もそういうんですよ。どうでしょう。」
淡々と、田舎なまりをまぜてひとごとのようにいうのだが、頬紅をこくぬったひろ子の化粧からさえ、彼女の心がもう決っているのをミネはさとった。結婚が一種の流行のようになっている中で、野村と閑子の結婚は新聞消息にも出されていた。そんなことからもひろ子は、らくな気持でミネを訪ねてきたのだろう。年も閑子と同じだった。しかし、閑子の方は今それどころではない。結婚してまる二か月の今、野村はもう大きな荷物として閑子をもて扱っている。しかも、互いにそれをまだ表面の問題とするところまできていないだけにミネの気持はもたもたしていた。