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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
「閑ちゃん。」
「あら、どうしたの、今日大会でしょう。」
閑子はいかにも嬉しそうに立ち上り、土だらけの手を払った。
「種まき?」
「そう。あの、絹さやなの。」
それは田舎にいるときの閑子が自分の手で収穫したさやえんどうなのだった。今まけば寒さをくぐって来年の春には花を咲かせる筈である。ミネはもう何ともいえずだまって縁ばなに腰を下した。土のついた手のままで閑子もきて並んで腰かけた。
「肩、もうこらないの。明日あたり、うちへこられない? 野村さんにそういって。」
試すようにミネはいってみた。
「でも、二三日中に野村旅行なの。仕事にゆくんだって。だから、そのあいだはだめよ。」
全然、しらない。ミネは目をそらし、珍らしいものをみるように家の中をながめた。きれいに掃除がゆき届き、床の間には茶の花と黄菊が小さな花びんにさされていた。閑子の好みなのだ。縁側を光らせ、部屋に花をかざりそんなことを人生の美しさだと閑子は勘ちがいをしているのではないか。いつだったか、病気だという野村を見舞ったミネを駅まで送ってきながら閑子は、急に立ちどまって両手で顔をおおい、泣き声でいったことがある。