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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
ミネが何とかしなければ誰ができよう。こんな一面を知らずに、野村の表面的な条件に合せて裁縫のできるやさしい女ですといったのだ。裁縫のできるやさしい女は、わずか二か月で夜叉のような女になり、白痴のような女になっている。それを相手に、まるで小娘に聞かすように何度も何度も一つことを、根気よく繰り返して絶望を重ねてゆく。お前がバカなんだよ! そういって閑子にどなりつけたい心を押ししずめかんべんしてくれとあやまったことも、もちろん閑子には通じていまい。だから閑子はあんなに激しい言葉で野村をののしったことをさえ忘れたように、その翌朝、まだ寝ているミネの枕もとへきて坐った。出支度をしている。
「ゆうべ考えたんだけどね、だまって出てきたことは私が悪かったと思うの。だから私、あやまって帰ってこようと思うの。ああはいったけど、世の中に文句のない人はないと思うの。」
まるでそれが、自分ひとりの言分で出てきたようにいう。
「ま、まちなさい。」
ミネはとび起きた。
「野村さんが、今日あたりくると思うの。話をつけにね。」
「ふうん。」
閑子は寝不足で充血した目をぱちぱちさせた。濁った小さな目は片びっこにつるし上っている。