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つまのざ

妻の座

壺井 栄

「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页

青空文庫

閑子はどんな小道具を出して解決しようというのだろう。歩いても、家に帰って机の前に坐っても、閑子のことが心を離れなかった。ちっとやそっとのことでは戻らないといった閑子の言葉が、女の執念のこりかたまりのように思えて、野村の困惑した顔が気の毒な思いで浮んだ。閑子は私の恥も一しょにさらすのだろう。しかたがない。

夕方、ミネは庭に立っていた。目は空をながめていたが、別に空の色が脳裏に映っているのではなかった。ぼんやりとした中で、閑子のことだけが心を占めていた。閑子がどんな言葉や態度で自分の意志を伝えているか、想像もつかない。芝居のできる閑子ではないからだ。どんな気まずさの中で、閑子は今を過しているだろうか。しょんぼりとかりてきた猫の子のようでもいられまいし、ちゃべこべと場つなぎの言葉をしゃべることもできまい。考えられるのは野村の前でぶざまに泣いている姿だが、野村はそれをのがれて外へ出ていったかもしれない。――その遠い閑子の姿をおっているミネの前へ、そのとき、本当の閑子が現れた。下駄の音を立てて、ボストンバッグをさげて、全身のなやみをその顔に集めて、閑子は帰ってきた。