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つまのざ
妻の座
壺井 栄
「新日本文学」1947(昭和22)年8月、1949(昭和24)年2月~4月、7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,695 字 · 165 页
お天気も上等らしく雨戸のすきまから障子にさしたかげもあかるい。
「マーマ、今日はごはん、縁側にしてね。」
娘の正子にまあまと甘えてよびかける、それも実に久しぶりだった。忘れていたまあまがこんなに自然に出たことが、たっぷりねむれたためではなく閑子がいないからだと気づいて、ミネはおどろいた。こんな些細なことにまでしらずしらず気をつかっていたのだろうか。
「雨戸、あけましょうか。」
いたわるような正子の言葉が、心にしみる。閑子とくらべてなんという相違だろう。閑子ならがたぴしとあてつけがましくやるところだ。そして彼女はよくいった。
「野村のね、一ばんよかったところは早おきだわ。よくいってた、作家なんていい合したように夜ふかしで朝寝坊だって。その点あの人は几帳面だったから。」
まるで死なれた夫を追憶するかのように閑子は野村をほめる。しかしそれは野村をほめるのが目的ではなく、ミネたちに早くおきて食事もみんなと一しょにしてほしい閑子の要求なのをミネは知っていた。悠吉もそれを聞くと眉をよせる。閑子の微妙な心のうごきをそんな言葉のはしにも感じ、ミネはひそかなためいきをする。