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むすめとおおきなかね

娘と大きな鐘

小川 未明

「赤い鳥」1924(大正13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,769 字 · 8 页

青空文庫

しかるに、この鐘が、二日も、三日も鳴らなかったことがありました。

「今日も寺の鐘が鳴らないが、どうしたんだろう。」と、一人が不平らしくいいました。

「このごろ、寺男のやつめ、なまけやがるんだ。」と、ほかの一人がいいました。

「そんなはずはなかろう。病気じゃないのか。」と、また、あるものはいいました。

「病気なら、鳴ったり、鳴らんだりするはずがねえ。昨日は、ばかに、小さな音であったが、たしかに鳴るには鳴った。」といったものもあります。

みんなは、鐘が鳴らないことに対して、不平でありました。

ほんとうに、村の一人がいったように、このとき、寺男は、病気でありました。幾日も、鐘をつくことができないので、どんなにか気をもんだでありましょう。

「お父さん、私が、かわりについてきます。」といって、娘は、鐘つき堂の方へゆきました。

「とても、おまえの力では無理だ。」と、父親は、まくらに頭をつけながらいいました。

娘の力では、太いなわを引いて、鐘つき棒を動かすことが困難でした。そして、やっと小さな音しかたてることができなかったのであります。

村の人たちは、自分の村で、鐘を打たないというのは、ほかの村に対しても、気のひけることのように考えました。