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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

の影響をうけていることが感じられる。その面からだけ見れば、雷鳥の調子たかいロマン精神も、根本にはいかにも小市民層の特色を湛えた性質をもっているものであったと思う。当時の日本の社会は、日露戦争の後をうけて国内保守の状況にあって、『青鞜』発刊の明治四十四年には有名な幸徳秋水の事件のために菅野すが子が死刑に処せられたときである。河田嗣郎著の婦人問題という本が発売をとどめられた時代。鳩山春子がデンマークの婦人参政権大会からの招待を拒絶した時代。そして一方では六千の市電従業員が待遇の不満を唱えて大晦日に市民の足を失わせ、紡績女工の数は激増した時期である。

婦人記者の月給は十五円平均であったという当時の社会の現実とてらし合わせて、雷鳥の感想の本質をよめば、彼女は日本の婦人一般の生活では一度もまだ明瞭に自覚さえされたことのない「我」というものを、超脱せよ、と云っていることに愕かれるとともに、婦人の社会での地位の向上を現実条件の改善から求めることに対する彼女の否定の性質が、どういうものかということも、考えられるのである。

嘗て自由民権の時代に大阪事件にかかわりをもった福田英子が『青鞜』