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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
この「宣言一つ」の中で、武郎は自分の出生、教育が、勤労する人々と同じでないから彼等にとって自分は無縁の衆生の一人である。新しいものになることは出来ないことだから、成らして貰おうとも思わない。彼等のために働くという「そんな馬鹿気切った虚偽も出来ない」と、彼は、当時の考えにしたがって、体で働いているものでなくては、どんな学者でも、思想家でも、歴史の進歩に真に寄与することは出来ないと考えたものであった。
今日になって見れば、有島武郎のこの考えかたの誤りは、全く当時のプロレタリア文芸理論家たちが抱いていた階級闘争と階級の関係、また文化との具体的な関係を見る上での未熟さを反映したものであった。文化・文学が、階級の動きとの関係で見られる場合、文学はただ従の関係でだけ見られて、文学がそれとして働きかけてゆく能動の機能は見落されていた。「宣言一つ」には、インテリゲンツィアのそういう歴史的な悲しい絶望がまざまざと浮き彫りされているのである。
「宣言一つ」は有島武郎自身にとっても前途への一つの暗い宣言となって、一九二三年(大正十二年)波多野秋子とともに、軽井沢で遂にその生命を絶った。