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ふじんとぶんがく

婦人と文学

宮本 百合子

※「作品について」参照

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页

青空文庫

ことを女にすすめる。女は「無能な夫との生活を守るために私は街に出て、こんなことまでして」一晩とまって一円もらって来る。かえって来て男に金は? ときかれ「電車賃だけですのよ」と答える。その中流めかしい言葉づかいは、その男女の生きかたの異常さと対照して読者の心持を妙にさせずにはいない。女は泊って来た男のところへ手紙をかきかける。「こういう世の中で無産の女性が、自分の生存を救うため唯一つのものを投げるのはやむを得ない事です。貴方にして真実な無産者の良心があるならば、それを認めなければならない筈です」だがどうせその男は金持ののらくら息子だ。三十円なんかよこすものか。女はその男の部屋へ訪ねてゆき、来あわせたアナーキスト仲間と丸の内の或る会社の寄附デーへ出かけて行って、五円ずつのところを十円とって来る。そのかえりに芝居を見物する。舞台の上では、心にない結婚をした女が、永年の後昔の愛人にめぐり合い、蒼白となって地獄と叫んで卒倒していた。「私も地獄と叫んで卒倒する女になって見たい」自嘲と苦しみの漲った作品である。

この作品で力づよく描き出された混乱と自嘲とは、作者の身も心も全くその渦中にあっての自嘲である。