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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
仮にもしそれだけ金銭的に裕福な境遇というものがあれば、彼女をゆたかにしているその境遇の諸条件が、殆ど決して彼女を曲りなりにも一人の作家として生活させないほど、日本の富と保守とは結びついている。それどころか客観的に今日の日本の社会における婦人の生活からは、ますます、有形無形のいろんなものが奪われてゆく傾向なのだから。その第一の雄弁なあらわれこそ、文学における人間性の喪失とその発展方向の喪失である。賢明で、教養と云いならわされた教養は十分もっているウルフが、キーツの時代と今日との間に、どんな大きい歴史の動きがあったか、文学の世代が、本質的にどんなに変って来ているかということについて、全然把握していない点は、私たちをおどろかせる。彼女が婦人作家の新しいタイプとして認めているメアリー・カーマイクルの文学の世界は、メアリーが女性としてこの社会に既に獲ている有利な諸条件の認識から出発しているであろうか。それとも、女性が、まだ獲ていないものについて、獲たいと願うものについて新しい認識が生れていて、そこから彼女の創造がうながされたものだろうか。
カーマイクルの現実がそうであったように婦人と文学との歴史の過程で重大なのは、寧ろまだ獲ていないものに対して、その世代及び個人がどういう評価と認識をもって、獲て行こうとしたかという