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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
が、世渡りの道も十分以上に心得ていた中島歌子の萩の舎の女ばかりがつくりだす空気の裡では、一葉に対する気分にも、その才能に対する評価と同時の意地わるさ、彼女の境遇への不言不語の軽蔑があったとみられる。
「中島先生のところで、みんなから集めました筆代の二円がなくなりましたとき、一葉さんに疑いのかかったことがございました。『貧乏はつらい』と云って泣いておられましたから」花圃が覚えがないなら泣かなくともよい、下らぬことで泣くものではないと慰めるよりも叱ったことがあるということも語られている。身に覚えがないのならそんな下らないことに泣くに当らないと判断する花圃は、いかにも「藪の鶯」の作者らしい。そんな下らない疑などをかけられようもない立場の令嬢らしい口ぶりと、どこまでも常識にだけ立った合理性をしめしていて、この人らしい。けれども、一葉としては、泣かずにいられない皆のしうちがあっただろう。
赤壁の賦のときの情景。そして、こういう涙をもこぼさなければならなかった周囲の空気。萩の舎門下の富貴な淑女たちから一葉が「ものつゝみの君」と呼ばれていたということも、そのような複雑な女同士の心理を背景としてみれば、肯ける。