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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
「この子」には一葉らしい才の閃きは小さく見えるけれども、骨格の常識性がいかにもむき出されて、もし一葉が口語の小説をその調子で書きすすめたらば、或は「たけくらべ」を嘗て書いたのはこの同じ人かという感想を与える結果を来したかもしれない。いつしか通俗文学に入ったかもしれないとも思える。一葉には、自分が恋愛について、友情について、人情のあやに対して抱いている人生感の窮極にある旧い常套を我から抉り出す力はなかった。当時のロマンティストたちの影響はそのような一葉の矛盾そのままを美に高める暗黙の作用としてだけ役立ったのであった。
「うら紫」は最後の作であって、このなかに一葉の新しい展開のモメントが蔵されているという意見もあるようだけれど、果してどうであろうか。表現の方から云って、もしこの作品から後に一葉が口語でかくように向ったとして、それが文学として高い峯に近づくためには、「うら紫」のお律の女としての生きかた、その居直りかたに、もう一歩つき進んだ作者の社会的な見解が期待されるのではなかろうか。無言に晴らす女の恨みのつめたい笑いへの共感以上に、自分の愛さえ良人に対して盗みの形で守ろうとしなければならない女の在りようについて、その正当な主張の可能を探ねる方向で、女としての大きい同情と哀憐と正々堂々さが求められるのではなかろ