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ふじんとぶんがく
婦人と文学
宮本 百合子
※「作品について」参照
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 180,792 字 · 351 页
うか。そしてそのことは、一葉にあっては、十五歳で萩の舎の門に入り二十五歳でその生を終るまでの複雑をきわめた十年間の生活が、彼女の内面につみ重ねた人生観の飛躍的な大整理、一つの歴史性から次の一つへの質の飛躍を意味しなければならないことであったのだろうと思う。
三宅花圃と樋口一葉とは、近代日本にとって先駆的な同時代の婦人作家、同門の出身、その上対蹠的な境遇ということから、常に照しあわせ対立してみられて来ている。
花圃の「藪の鶯」は当時として新しいものであったかもしれないが一種の風俗小説で、芸術としての美、詩情の美は、旧来の日本の女の最後の代表者ともいうべき一葉の作品に遠く及ばないというのが定評であると思う。だが「藪の鶯」の新しさそのものが、そこにある思想の本質では明治二十年以前にあった婦人の新しい社会生活への動きが幹で截られたあとに生えた蘖にすぎず、しかも蘖たる自身の本質について作者は全く無自覚であったということは、「たけくらべ」の作者一葉が、自身のロマンティシズムのうちにふくまれている矛盾について知る力を持っていなかったことといかほど逕庭があるだろう。