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おんなけいず

婦系図

泉 鏡花

「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页

青空文庫

で、とんだ災難で、早瀬は参謀本部の訳官も辞した、と新聞には体裁よく出してあるが、考えて御覧なさい。

同じ電車に乗っていて、坂田氏が掏られた事をその騒ぎで知らん筈がない。知っていてだね、紙入が自分の袂に入っている事を……まあ、仮に攫徒に聞かれるまで気がつかなんだにしてからがだ、いよいよ分った時、面識の有る坂田氏へ返そうとはしないで、ですね、」

河野にも言を分けて、

「直接に攫徒に渡してやるもいかがなもんだよ。何よりもだね、そんな盗賊とひそひそ話をして……公然とは出来んさ、いずれ密々話さ。」

誰も否とは云わんのに、独りで嵩にかかって、

「紙入を手から手へ譲渡をするなんて、そんな、不都合な、後暗い。」

「だがね、」

とちょいちょい、新聞を見るようにしては、お妙の顔を伺い伺い、嬢があらぬ方を向いて、今は流眄もしなくなったので、果は遠慮なく視めていたのが、なえた様な声を出して、

「坂田が疑うように、攫徒の同類だという、そんな事は無いよ。君、」

「どうとも云えん。酒井氏の内に居たというだけで、誰の子だか素性も知れないんだというじゃないか。」

「父上に……聞いて……頂戴。