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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
余計に目に着く。
ただし遣方が仇気ないから、まだ覗いている件の長屋窓の女房の目では、おやおや細螺か、鞠か、もしそれ堅豆だ、と思った、が、そうでない。
引出したのは、細長い小さな紙で、字のかいたもの、はて、怪しからんが、心配には及ばぬ――新聞の切抜であった。
さればこそ、学校の応接室でも、しきりに袂を気にしたので、これに、主税――対坂田の百有余円を掏った……掏摸に関した記事が、細に一段ばかり有ることは言うまでもない。
お妙は、今朝学校へ出掛けに、女中が味噌汁を装って来る間に、膳の傍へ転んだようになって、例に因って三の面の早読と云うのをすると、(独語学者の掏摸。)と云う、幾分か挑撥的の標語で、主税のその事が出ていたので、持ちかえて、見直したり、引張ったり、畳んだり、太く気を揉んだ様子だったが、ツンと怒った顔をしたと思うと、お盆を差出した女中と入違いに、洋燈棚へついと起って、剪刀を袖の下へ秘して来て、四辺をして、ずぶりと入れると、昔取った千代紙なり、めっきり裁縫は上達なり、見事な手際でチョキチョキチョキ。
母様は病気を勤めて、二階へ先生を起しに行って、貴郎、貴郎と云う折柄。