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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
「時に、いかがでごわりまするな、御令室御病気は。御勝れ遊ばさん事は、先達ての折も伺いましてごわりましてな。河野でも承り及んで、英吉君の母なども大きにお案じ申しております。どういう御容体でいらっしゃりまするか、私もその、甚だ心配を仕りまするので、はあ、」
「別に心配なんじゃありません。肺病でも癩病でもないんですから。」
と先生警抜なことを云って、俯向きざまに、灰を払ったが、左手を袖口へ掻込んで胸を張って煙を吸った。礼之進は、畏ったズボンの膝を、張肱の両手で二つ叩いて、スーと云ったばかりで、斜めに酒井の顔を見込むと、
「たかだか風邪のこじれです。」
「その風邪が万病の原じゃ、と誰でも申すことでごわりまするが、事実でな。何分御注意なさらんとなりません。」
と妙に白けた顔が、燈火に赤く見えて、
「では、さように御病中でごわりましては、御縁女の事に就きまして、御令室とまだ御相談下さります間もごわりませんので?」
と重々しく素引きかけると、酒井は事も無げな口吻。
「いや、相談はしましたよ。」
「ははあ、御相談下さりましたか。それは、」と頤を揉んで、スーと云って、
「御令室の思召はいかがでごわりましょうか。