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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
「やまと新聞」1907(明治40)年1~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 172,760 字 · 343 页
」
「厭だわ、私、厭、行っちゃ。」
言が途絶えると、音がした、釣瓶の雫が落ちたのである。
差俯向くと、仄かにお妙の足が白い。
「静岡へ参って落着いて、都合が出来ますと、どんな茅屋の軒へでも、それこそ花だけは綺麗に飾って、歓迎をしますから、貴娘、暑中休暇には、海水浴にいらしって下さい。
江尻も興津も直きそこだし、まだ知りませんが、久能山だの、竜華寺だの、名所があって、清見寺も、三保の松原も近いんですから、」
富士の山と申す、天までとどく山を御目にかけまするまで、主税は姫を賺して云った。
「厭だわ、そんな事よりか、私、来年卒業すると、もうあんな学校や教頭なんか用は無いんだから、そうすると、主税さんの許へ、毎日朝から行って、教頭なんかに見せつけてやるのにねえ。口惜しいわ、攫徒の仲間だの、巾着切の同類だのって、貴郎の事をそう云うのよ。そして、口を利いちゃ不可いって、学校の名誉に障るって云うのよ。可うござんす、帰途に直ぐに、早瀬さんへ行っていッつけてやるって、言おうかと思ったけれど、行状点を減かれるから。そうすると、お友達に負るから、見っともないから、黙っていたけれど、私、泣いたの。